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STARの1冊

第8回佐伯日菜子さんインタビュー

写真:佐伯日菜子さん

佐伯日菜子 (さえき・ひなこ)

1977年、奈良県生まれ。1994年、映画「毎日が夏休み」で女優デビュー。その年の日本アカデミー賞新人賞、山路ふみこ賞新人賞などの各新人賞を受賞。その後、映画「エコエコアザラク」「らせん」やドラマなど女優として数多くの作品に出演、バラエティー番組など各方面でも活躍する。2002年サッカー日本代表奥大介選手と結婚。同年長女可鈴ちゃんを出産。翌年には次女萌奈ちゃんが誕生、ニ児の母となる。
一時休業後、女優復帰作映画第1作『ハミングライフ』に出演。(現在公開中。テアトル東京他上映〜2/2まで)昨年10月に開催された「第19回東京国際映画祭」で上映および舞台挨拶に出席。脚光を浴びる。現在は次回作の新作映画クランクインに備えると共に、TV、雑誌など各メディアへの出演や執筆、そして女優業と日々奮闘中である。

——  本は子供のころからお好きだったとか……。

小さいときから家の中がちょっとした本屋のようになっていました。兄と私とのですけど。何かあると直ぐご褒美に本を買ってくれる親だったんです。例えば歯医者さんで泣かないで治療できたら本を買ってくれるとか……。私もお菓子よりも、本を読んだり、自分で物語を作るのも好きでしたから良かったです。

——  今日は、小さい頃よく読んだ本を何冊か紹介して頂けるんですよね。

はい。まずは「カロリーヌ」シリーズです。絵がすごく大人びていて、絵柄と、色の使い方がすごくきれいなんです。カロリーヌという女の子が犬を連れて冒険するお話なんです。

—— 大人向けのイラストのようなタッチですね。

とても好きな本で、大人になってから青山のクレヨンハウスという絵本屋さんで、原書のフランス語バージョンを買ったぐらい。話自体は、欧米の話でキャンプやフリーマーケットに行ったりする話です。幼稚園ぐらいから小学校ぐらいまで何度も読み返しましたね。

—— 次に「ありこのおつかい」ですね。

すごくシュールなお話なので覚えていたんです。いわゆる弱肉強食の話なんですね。自然の食物連鎖というか……。小さいありがお使いに行く時に、カマキリに食べられ、そのカマキリがムクドリに食べられて、ムクドリが山猫に食べられ、山猫がクマに食べられる。最期はハッピーエンドになりますが、絵も可愛くないというか大人っぽい。不思議な話でした。

——  一方、こちらは絵本らしい絵本。

「いやいやえん」こちらは絵本の王道というか、教訓たっぷり。わがまま言っちゃいけないとか。積み木で船をつくって鯨を捕まえに行くとか、リアルなようで、メルヘンの混じっている感じです。想像力をかき立てる本ですね。

—— 成長と共に読む本も変わってきたようですが・・・。

そうですね。中高生ぐらいになると、特に高校時代は、片道2時間の電車通学でしたから常に本をもって登校していました。朝家を出るときは、星が見える程でしたよ。
その頃は、パンクな感じにあこがれてたんでしょうね。村上龍さんの「コインロッカーベイビーズ」を読んでいました。彼の文章って、渦みたいまものに巻きこまれるかれるところがあるじゃないですか。危険なぐらいその世界に入り込んじゃう。
匂いまで感じるぐらいのドキドキ感があってずっと読んでいましたね。今でもたまに読みますね。村上さんの作品の中でも一番好きな作品です。今度、海外で映画化されるそうで楽しみです。
でも自分が落ち込んでいる時には、読んではいけないと思う作品ですね。読むのにエネルギーがいるので、元気がある時に真剣に取り組みたい本です。

—— ガラッとイメージが変わりますが、吉本ばななさんも、お好きと伺いましたが・・・。

特に「はつ恋〜high&dry」ですね。大人のメルヘン。山西ゲンイチさんの装丁のイラストがいい。吉本さんはエッセイとか日記とかも読んでますが、「自然界に対する畏怖」が嘘くさくなく、描かれていてそれがすごくいいです。

—— 文体とか、表現の面ではいかがでしょう?

表現の方法が、バシッと私の心をリンクするので気持ちいいですね。
主人公がやきもちを焼いている自分を語るところで、「出所がわかれば亡霊も消えてなくなる」という風な表現とか・・・。自分が焼きもちを焼いていた原因がわかると、焼きもちもすーっとなくなるというような意味なんですけど。他にも言い得て妙な、表現がたくさんあります。
あと、登場人物が全部甘えないで、自分の足でしっかり立ってるところが素敵で、あこがれたり、共感したりします。

—— さらにもっとハードな馳星周「楽園の眠り」も読まれたとか・・・。

「楽園の眠り」はびっくりしましたね。私は、この作品がのNo1だと思います。馳さんには、夕張映画祭でお会いしましたが、すごくいい人でした(笑)。
子供を虐待している刑事のもとから、その子が逃げ出した時の刑事の焦燥感が初めに描かれています。そしてやがてある女子高生がこの子供を連れ回すんです。その時、子供の世話の大変さ加減が滅茶苦茶よくわかるように描かれています。なんで馳さんこんなに子どものお守りの大変さがよくわかるんだろう?って思いました。
あせった男はそんな二人を、刑事の嗅覚で捜し始めるんです。子供がかわいそうだから、ではなくて男が虐待している事実を、他人にバレてしまうことを恐れていたのです。その探し方がものすごく細かくて、すごい。結末は言えませんが、最期はつらくて、今でも思い出し泣きしそう。まさに馳さんの世界。「夜光虫」「不夜城」が馳ノワールといわれていますが、私はこちらの方が好きですね。

——  そして感動作、灰谷健次郎「兎の眼」

やはり、こちらも子供が主人公で、とにかく泣いちゃうから公共の場で読めないですよ。すごい感動します。灰谷さんの子供に対する目線はものすごく生き生きしていて、登場する子供もかわいいし。スモッグの警報で学校が休みになるという場面があり、主人も関西出身で昔そんなことをいっていたなとふと思いました。
主人は兵庫県出身で、作品の中にでてくる「H工業地帯」は阪神工業地帯で、舞台は尼崎ではないかと、推察しました。どうもそうらしいです。
表現もすばらしくいですね。どぶの中からネズミをおびき寄せる場面があるんです。まんまとおびき出されたネズミを見つめる子供たちの好奇心のかたまりのような視線を、「子供たちの目が神様(=ネズミ)を焼き殺した」とか。
「少女の器」という作品もよくて、どちらを紹介しようか迷いましたが、こちらもおすすめです。

—— 角田光代「対岸の彼女」は、二人の女性の友情を描いた作品ですね。

子供を育てながら、仕事をすることの大変さがよく書けていたり。勝ち組と負け組、二人の友情、過去、いろんなことがあった30代の女性が共有できたりできなかったり、
友情の中にもモヤっと残る何かをすごく丁寧にリアルに描かれていて、何とも言えない気持ちになりました。

—— なんともいえない気持ちというと……

元気がでましたね。現実は厳しいけどがんばって行こうと。読後感さわやかな感じです。映画化されたらぜひ出演したいですね。

—— 中村航さんの短編集「LOVE or LIKE」の中の「ハミングライフ」という一編が映画になるそうですね?ご出演されるとか・・・。

はい。中村航さんはポップな感じの作家さんですね。「日本版アメリ」だと思ったんですよ。これからどうやって都会で生きていこうかフワフワしていたいた主人公が、いろいろな経験をしてきちんとした目標を見つけていく……。キャンキャンのモデルの西山茉希ちゃんのバイト先の先輩。そんな役をやる歳になりました(笑。)この作品で10月に東京映画祭にでてきました。今公開中で、2月13日まですからぜひどうぞご覧ください。

—— 普段はどのような本屋さんに行かれますか?

家の真ん前が、リブロなんですよ。なので、暇さえあればうろうろしています。新刊が出た時、とか
意味もなくふらっと。

——  本好きには理想的な環境ですね。

あと、リブロの中で日曜日にお話会というのをやっていて子供たちにパネルシアター(紙芝居)絵本のコーナーがあるので、子供を連れて……。

—— どういうコーナーを回りますか?

雑誌は全てチェック。平積みだと、段差があるじゃないですか。おっ「東京タワー」と「ああ娘」が売れてるな。とかチェックをいれたり。堂本光一さんと品川庄司さんの本が並んでて、「おっ品川さんの方が売れてる」なとか。「のだめカンタービレ」コーナーがバーッとあったりすると、「ここまでやるか?」と感心したり。

——  「平積の段差」に注目するとはマニアックですね。

「暴れん坊本屋さん」を読んだことがあって。本屋さんでも働いている漫画家さんによる本屋さんの裏事情本で。なぜが、主人が買ってきたんですよ。しかも二冊重なってて偶然買っちゃったんです。
「なんか、ヘンな本買っちゃった」って。読んでみたら結構面白かったです。

—— 今日はいろいろとありがとうございました。

「カロリーヌうみへいく」ピエール プロブスト(BL出版) 「カロリーヌうみへいく」ピエール プロブスト(BL出版)

「ありこのおつかい」石井 桃子, 中川 宗弥(福音館書店) 「ありこのおつかい」石井 桃子, 中川 宗弥(福音館書店)

「はつ恋〜high&dry」よしもとばなな(文藝春秋) 「はつ恋〜high&dry」よしもとばなな(文藝春秋)

「楽園の眠り」馳星周(徳間書店) 「楽園の眠り」馳星周(徳間書店)

「夜光虫」馳星周(角川書店) 「夜光虫」馳星周(角川書店)

「不夜城」馳星周(角川書店)「不夜城」馳星周(角川書店)

「兎の眼」灰谷 健次郎(角川書店)「兎の眼」灰谷 健次郎(角川書店)

「少女の器」灰谷 健次郎(角川書店)「少女の器」灰谷 健次郎(角川書店)

「LOVE or LIKE」石田 衣良 、 中村 航、 本多 孝好、 真伏 修三 、 中田 永一 、 山本 幸久(祥伝社)「LOVE or LIKE」石田 衣良 、 中村 航、 本多 孝好、 真伏 修三 、 中田 永一 、 山本 幸久(祥伝社)

「暴れん坊本屋さん」久世番子(新書館)「暴れん坊本屋さん」久世番子(新書館)