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STARの1冊

第16回弓削智久さんインタビュー

写真:弓削智久さん

弓削智久 (ゆげ・ともひさ)

1980年5月東京生まれ。「仮面ライダー龍騎」で注目され、「saru phase three」、「地球でたったふたり」、「ワルボロ」、「未来予想図」など映画、ドラマで活躍。初めて脚本と主演を担当した映画「サクゴエ」が 公開された。
≪池袋シネマ・ロサ≫で公開中。上映開始:21:00〜
≪渋谷アップリンク・ファクトリー≫ 11月10日より公開
★ 映画「サクゴエ」 公式サイト http:// www.sakugoe.com
★ オフィシャルブログ http://ameblo.jp/yuge-tomohisa/

—— 小さい時から本好きでしたか?

そうでもなかったですね。でも、大学1年の時にチャンスをいただいて、役者になってから本格的に読み出しました。新人だったので、ドラマや映画などに出演しても、出演するのは台本の一場面だけ。これでは物語全体に対する理解が薄く、役者としてどうかと思いました。そこで、小説を本格的に読み始めたんです。

—— それで手に取ったのが、村上春樹さんの「ノルウェイの森」ですね。

いろいろと本を探していて、書店にちょうど文庫になった「ノルウェイの森」が目に入って、読んでみました。

そうしたらこれが、僕にぴったりだったんですね。物語の世界にぴったりとハマってしまって、自分でも驚きました。「本ってこんなに面白いものなのかと」それからどんどん読み出しました。「ダンス・ダンス・ダンス」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」から「キャッチャー・イン・ザ・ライ」とか、村上春樹さんの本はほとんど読みましたが、僕には最初の一冊が今でも一番よかったと思っています。

—— どういうところ?

精神世界の話とか、気味悪いところもでてきたりしますけど、すごく想像しやすくて、小説ってこんなに面白いものなんだと、感動しました。主人公が、心の病にかかった女の子を森の中に施設にお見舞いに行くシーンを、よく覚えています。気持ちがすれ違っていくイタイ様子が、ものすごくリアルでした。

後から、いろいろな人に聞いて分かったのですが、当時かなりベストセラーだったんですね。そういう事もあまり知らずに、ふと手に取っただけなんですけど。いい作品に当たってラッキーでした。

—— その当時、他にはどんな小説を読みました?

村上龍さんの「愛と幻想のファシズム」ですね。政治結社のカリスマの鈴原冬二が、暴動を起こした群衆の中に飛び込んでいって、拡声器をもって演説する場面がよかった。あと、ゼロと出逢う場面もカッコよかったですね。いつか、絶対に冬二を演じてみたいと思いました。

この本を、読んでいたのがハワイ旅行中だったんですがあまりに面白くて、とうとう海にも行かず、ほとんどホテルの部屋でずっと読み切っちゃいました。一緒に行った友達は、あきれていたかもしれないですね。おまけに、「この本は絶対読んだ方がいい」と強気に薦めたりして。いつもは、そうじゃないんですが……。あと、京王線に乗っていた時たまたま隣に座った人がこの本を読んでいて、つい、話かけちゃったりしちゃいました。まるでアブナイ人ですね。

きっと、冬二になりきってたんですね。僕はもともと、本の内容とかいろいろ影響されやすい性格なんです。

—— あと、金城一紀さんが大好きだとか。

直木賞受賞作の「GO」がすごく気に入って、次々と読みましたね。「フライ、ダディ、フライ」「レヴォリューション No.3」とか。学生時代の実体験がもとになっている小説だと思いますが、女の子にモテたいばかりに文化祭を乗っ取ったり、破天荒なところが楽しい。

金城作品でも、ドラマになった「対話篇」の中の一編「恋愛小説」が特に好きです。自分が関わったり、好きになった人間は必ずしんでしまう死神の話なんです。女の子を好きになったり、友達になると相手は死んでしまうから、人間と関わらないようになっていく。そんな葛藤を描いた作品で、その切なさがよかったんです。

—— 金城さんにお会いになったことがあるとか?

金城さん原作のドラマの打ち上げで、お話しする機会がありました。僕は結構お酒を飲んでいて、作品のことやらいろいろととりとめもなく、楽しくおしゃべりしました。印象としては、何かこちらの心の中が全部見られているような、そんな感じがしました。

それからしばらくして、金城さんからシリアルナンバー入りの本をいただいたんです。しかも、ブルース・リーのポストカードが添えられていたんです。これはものすごく嬉しかったです。

「フライ、ダディ、フライ」、「レヴォリューション No.3」とか、よくブルース・リーの話がよく出てくるんです。ケンカの後に、武闘家の試合のように相手から目をそらさずに挨拶をするシーンとか。まあ、僕もしばらくブルース流の挨拶をマネしたりしました。

本当に、金城さんはブルース・リーが好きなんだなと、感激しました。

—— 他に、好きな作家さんは?

伊坂幸太郎さん。「グラスホッパー」「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」「砂漠」あたりです。どれも物語の展開が斬新で、タランティーノのようなテンポのよさを感じがしました。いくつかのストーリーが、絡み合ってエンディングに向かってまとまっていくところが、いいんですよ。

もうひとり、垣根涼介さん。とくに「ワイルド・ソウル」がよかった。ブラジル移民政策により苦渋をなめた者たちの怨恨。政府や外務省に対してその恨みを晴らすべくとった手段に驚かされます。痛快でスカッとするお話しです。

—— 小説以外の分野でもおすすめがありますか?

「弓削智久フォトブック BALANCE」という写真集を出したときに、普通の写真集にはしたくなかったんです。その時に「こんな感じにしたい」とイメージした本です。それが高橋歩さんの「LOVE&FREE」、あと「人生の地図」

「LOVE&FREE」は世界中を放浪して書いた写真&エッセイ。見たこと聞いたことを自分なりの、やや強引な解釈で、書いているところがいいですね。僕は、その見方や考え方に大いに賛同できてしまいました。「好きな事をやっているのに、不満ばかり言っているのは、カッコ悪い」とか、とにかく弱気な発言がないです、この方は。メッセージは常にポジティブで、とくに友だちが元気をなくしているときなんかに、よく薦めてますね。

あと沢木耕太郎さんの「深夜特急」。やはり、僕は旅が好きですね。2〜3週間ぐらいの旅しかしてませんが、必ず何か刺激を受けますね。カルチャーショックを受けたり。そして、後から振り返ると、何かしら人生の転機になっている。

—— 「深夜特急」はどの国が印象に残りました?

香港・マカオ編が一番ですね。大沢たかおさんのTVドキュメンタリーが最近再放送されてましたが、人間くさいところがよく見える国だからでしょうか。上海にいったことがあり、住人の貧富の差が大きくて、でもそれが混在しているようなアジア的なところを、見たからかもしれません。「深夜特急」は、最後にロンドンに着くんですが、そこにもなじみがあります。英国のブラックストンという町に友人がいて、マスというクラブでDJをやらないかと誘われて、日本から友人たちとしばらく滞在したことがありました。自分の知らない日本人がDJをやっても、言葉が分からなくても、それがいい音楽だったら皆踊り狂ってくれると。まさに音楽は、言葉を越えると実感したましたね。

放浪というか、長期旅行に憧れているんです。

—— 最近、映画の脚本を書かれたということですが。

高校時代がものすごく楽しかったので、何かの形で書き留めておこうと思ったんです。 

それで、日記もなんだし、小説の形にしようと思って書いたことがあったんです。そんな話を事務所でしていたら、「今度、何か書いたもの見せてよ」と社長にいわれたんです。

それが今回、脚本と主演をさせていただいた映画「サクゴエ」です。

「富士山が動いた」ように見えた、それは錯覚だったんですが、学生時代の経験がベースになっています。それと、僕はビルの屋上が好きで、よく景色をながめたりするんです。そんなところから、「屋上に倉庫みたいなのがあって、そこに男が住んでる」という設定もあるかなあ、と思いついて書き始めました。

—— この作品の中で一番いいたかったことは?

生きていくと、いろいろな壁や柵がでてきます。たとえば物語の中では、屋上に住んでいるトミーは友人に裏切られて傷を負っている。もう一人、モリタは騙されて借金を追っている。どちらも負けている人間ですが、彼らがそんな苦境を越えていくところを書きたかったんです。ラストは重い仕上がりになってますが、僕はポジティブなメッセージを伝えたかったんです。今、≪池袋シネマ・ロサ≫で公開中で、11月10日から≪<渋谷アップリンク・ファクトリー≫で公開されますから、ぜひ、見に来てください。 

—— 最後に、どのような書店によく行くのかを、教えてください。

仕事先が近かったり、遅くまで開いている書店によく行きます。夜、遊んだ帰りにふらっと立ち寄ったり……。酔っぱらっていると、翌朝、気がつくと何冊か買った覚えのない本が部屋にあって驚くことがあるんです。読んでみるとこれが面白かったりします。本屋大賞については、知らなかったのですが、これから注目してみようと思います。

「ノルウェイの森」村上春樹(講談社) 「ノルウェイの森」村上春樹(講談社)

「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹(講談社) 「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹(講談社)

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」J.D.サリンジャー作、村上春樹訳(白水社) 「キャッチャー・イン・ザ・ライ」J.D.サリンジャー作、村上春樹訳(白水社)

「愛と幻想のファシズム」村上龍(講談社) 「愛と幻想のファシズム」村上龍(講談社)

「GO」金城一紀(角川書店) 「GO」金城一紀(角川書店)

「対話篇」金城一紀(新潮社) 「対話篇」金城一紀(新潮社)

「グラスホッパー」伊坂幸太郎(角川書店)「グラスホッパー」伊坂幸太郎(角川書店)

「ワイルド・ソウル」垣根涼介(幻冬舎)「ワイルド・ソウル」垣根涼介(幻冬舎)

「BALANCE 弓削智久フォトブック」写真集(美術出版社)「BALANCE 弓削智久フォトブック」写真集(美術出版社)

「LOVE&FREE-世界の路上に落ちていた言葉」高橋歩(サンクチュアリ出版)「LOVE&FREE-世界の路上に落ちていた言葉」高橋歩(サンクチュアリ出版)

「深夜特急1 香港・マカオ」沢木耕太郎(新潮社)「深夜特急1 香港・マカオ」沢木耕太郎(新潮社)