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須藤元気 (すどうげんき/元格闘家・作家)
須藤元気 1978年東京都生まれ。高校時代にレスリングを始め、高校卒業後渡米、アートを学ぶ。帰国後、逆輸入ファイターとしてデビュー、UFCーJ王者に。 2006年12月31日引退。現役中も俳優、執筆、書道展入選など幅広く活動。現在は作家活動をメインに、講演活動やチャリティーにも精力的に参加。それらの活動を通して「WE ARE ALL ONE (すべては一つ)」というメッセージを発信している。著書に『幸福論』(ランダムハウス講談社)『風の谷のあの人と結婚する方法』(ベースボール・マガジン社)『神はテーブルクロス』(幻冬舎)『レボリューション』(講談社)がある。
—— 今日は、愛読書についてお話し伺わせてください。司馬遼太郎さんがお好きだそうですね。
まずあげたいのが「峠」。歴史上の人物である河井継之助が、僕にとってすごく魅力的な存在なんです。
—— どのような人物なんでしょう?
思考のパターン、すべての行動がトリッキーで、独創性があります。枠にはまらない生き方ですね。武士社会の中で家老まで上り詰めて、越後長岡藩を独立国とすることまで考えていたことが素晴らしいと思います。
もともと司馬遼太郎さんが好きで、歴史好きになったのも司馬さんがきっかけだったんです。「竜馬がゆく」「翔ぶが如く」などを読んでモチベーションあげたり、士気を高めてきました。格闘技の試合も含め他の面でも。
幕末の人々の持っている胆力というか、剛胆な生き方にも魅力を感じます。その胆力を現代に持ってきたら、自分にできないことなんかないですかね。幕末というのはいつ命を奪われてもおかしくない時代ですし、みんな命がけで理想を追っていた時代。
幕末から明治にかけては敵も味方もないような気がするんですよ。官軍だろうが、幕府軍だろうが、一人一人が自分のユートピアをつくろうと、命を投げ出して行動に出ているところにすごく惹かれます。
現代で言うと、民主化のために8年ぶりにパキスタンに帰国して暗殺されたブット氏にも同じものを感じました。殺されることは覚悟で帰国したのでしょう。
おそらく彼女なりの命がけの理想があったからではないでしょうか。
—— 物語の中で印象に残っている場面など教えてください。
河井は、戦闘で銃弾に当たりそれが原因で亡くなるんですが、最後にいった言葉が「もっと火を強くしろ」といったそうです。亡くなったら自分の体を燃やせと家来に伝えるんですけど、いずれ自分が死んで焼かれる、その火をみながら死んで行く……。それは、すごく美しいものに思えました。
「もっと光を」というゲーテの有名な言葉がありますが、「もっと火を」といって死んでいく姿は、生に執着しないというか、死というものに対してなんの躊躇もないという姿勢に感動しました。
格闘技を辞めてから、自分自身の志をいだいて行動しようという時に、司馬さんの本は僕を後押ししてくれました。
はじめて読んだのは学生時代ですが、今まで何回も読み返してました。
司馬遼太郎さんの本は全部おもしろいですが、先に言ったとおり、人物では河井継之助が好きです。坂本竜馬、高杉晋作も好きですが、彼の生き方が特に魅力を感じます。
—— 心にのこるエピソードがありますか?
河井は、官軍につくか、旧幕軍側につくかという時に中立を選んで、一藩独立を主張し続けました。その判断をいまでも異議をとなえる人がいるようですが……。
右が左かといわれている時に、あえてこのグレーゾーンを選ぶ。僕は、こうしたグレーゾーンにこそ真理が潜んでいると思っているんです。二者択一というのは、偽りがあると思っています。その間に真理があると理解しているのです。
そういった意味では河井のとった中立の道を取ったことは、僕のポリシーにも影響を与えてくれました。
この世界というのは相対性の世界ですから、その中に絶対性を求める事自体が問題があるんです。ホットコーヒーがあるからアイスコーヒーがある。世の中がアイスコーヒーだけになるとそれは、アイスではなくなります。
—— 村上春樹さんもお好きだそうですね。
実は、村上春樹さんは、僕が一番最初に本を読み出すきっかけになった作家なんですよ。最初に手に取ったのが村上春樹さんの初期の短編集です。
21歳ぐらいの時だと思いますね。村上さんの本を読むことで「本の面白さ」に気づいたんです。それからは、乱読するようになりました。
一番好きなのは「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」です。
—— 村上春樹さんの面白さ、魅力は?
その時思ったのは、なんか乾いた感じがして、力が抜けている文体でしょうか。これは司馬さんも共通するんですが、ちょっと引いているところを感じます。作者の我があまりでていないというか、僕も書くんですけど、やはり本を書くとどうしても自分の意見を言いたかったりとか、独自の世界観を書こうとしてしまうわけですからね。
ところが、それを好んでくれる人も反発する人もでてくるわけです。僕がいいと思うのは、ちょっと一歩引いた文体というか、真空状態のように読者を引きつける文体。
そういった意味で村上さんの文章っていうのは真空状態をもっていると思うんです。
—— ご自身で本を書かれる時もそうですか?
そうですね。常に一歩引くというか……初めて本を書くときから意識しました。
—— 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はパラレルワールドのお話しですが。
そうですね。僕は今この世界も、夢の世界も同じだと考えていますので。今見ているものが現実ですが、夢の中で見たものも同じように現実なんだととらえています。胡蝶の夢ではないですが、今見えているものはある意味自分の意識の投影物ですから、今映画を観ているような状態なんです。
こういった量子論的視点からみると、「世界の終わり」と「ワンダーランド」という二つの世界を同時に描いてますが、両方とも現実、リアルの世界なんです。
もちろん、これは僕の考えですが……
ちょっとむずかしいですが量子論的な考えが、こういった小説という形で読み物として面白く読めるというのは素晴らしいと思います。コンプリートされている形でつくられたのは凄いことです。こういった世界観をなかなか書くことは難しいと思います。
ふたつの世界がコントラストで出ているんですが、出ていないような気がします。
やはり僕にとっては2つともリアリティとして存在している。
主人公も力が抜けててどんなことが起こっても「やれやれ」ですましてしまう。
どんな状況でも力を入れないっていうか、決して悲観的にもとらえていないし、「世界の終わり」だけど「ワンダーランド」なんですね。けっしてネガティブに生きているわけではないですね。
どんな現象でも自分のとらえ方ひとつで世界が変わる。と信じているので、この主人公の力の抜け方に共感できます。
—— 一言で、未読の方に説明するとしたら?
一つのレストランで寿司とステーキを両方楽しむような物語、かな。ただし、あなたが寿司もステーキも好きならば。
基本的に人間がイマジネーションできるのは現実なんです。目の前にあるのは誰かがイメージしたものが、形になったものなんです。
—— 本はどこで買いますか?
今はネットでの購入が多いです。でも本屋さんにいくのは好きですね。昔は毎日本屋さんにいってましたね。
—— どこか行きつけの本屋さんはありますか?
青山に住んでいたころは、青山ブックセンターへよく行ってました。
毎日行くとだんだん「本が呼ぶ」ようになるんですよ。本の選び方がわかってきます。これはやはり経験だと思いますね。昔本読み出した頃は一日1冊、2冊読んでましたから。その時、とにかく本は投資しよう、惜しみなく買おうと思って。
それがいつか何千万に化けるんだからと(笑)。
それで最初の頃はよく本選びに失敗したんですよ。面白いと思って買ったもののが、読んでみるとそうでもなかったりしたんですよ。でもそれがだんだん失敗しなくなったんです。それは、やはり本屋に通ったからだと思うんです。野球の素振りと同じで、だんだん球の当て方がわかってきたというか。
よく行く棚はありましたけど、基本的にオールジャンルです。
—— 本を読む場所
喫茶店ですね。本を読むために、はしごします。一番本を読んだのが22才から24才の頃でホントに毎日3軒ぐらい喫茶店に行ってました。練習より本を読んでいる時間の方が多かったです(笑)。
—— なぜ、「はしご」なんですか?気分を変えるということですか?
気分的にもそうですが、ちょっと疲れたなあと思ったら町を歩いて、次の喫茶店に入ったりしました。今も家では読まないですね。
知識に飢えていたというか、僕は学生時代あまり勉強しなかったのですが、本を読み出してから、だんだん知識を入れるのが楽しくて、なんでもっと本を読まなかったんだろうと、その時は思いました。
本というのは1冊1000〜2000円でその人が数年考えてきたことや研究したことを数時間で読めますよね。やはり読書ほど効率のいい自己投資はないと思います。
本は読まないと損だなと思います。おすすめというか、読まない手はないですね。
厚い本が売れないといわれているようですが、僕は逆に分厚い専門的な本が好きです。
—— 須藤さんの最近の著作について伺えますか?
いちばん最近の本は、「バシャール スドウゲンキ」なんですが、これがマニアックな本でこれからの地球がこれからどういう風に変化してゆくかというダリル・アンカとの対談本なんです。正確には、アンカさんを通じてバシャールという地球外生命体と、対話したという内容です。
あと、一般の方向けの本では、中南米を横断の旅「レボリューション」、勉強の仕方や自己啓発「風の谷のあの人と結婚する方法」、日常の中で視点を変えることの大切さを書いたエッセイ「神はテーブルクロス」。
—— 「風の谷のあの人と結婚する方法」が一番売れてて15万部、昨年出たばかりの「レボリューション」も7万部とベストセラーになっていますね。
自分の書いたものを多くの方に読んでいただいてもらい、うれしく思います。
—— 「バシャール スドウゲンキ」について分かりやすく解説していただけますか?
ちょっと壊れた奴だと思われるかもしれないですが、バシャールという地球外生命体と瞑想中にコンタクトをとろうと思ったんですけど、コンタクトがとれなくて。「チャンネル」が違うのかなあと思っていたんですよ。そんな時に、出版社の方から「バシャールの対談本だしませんか?」っていう話がきたんですよ。
それで、ダリル・アンカさんがチャネリングするバシャールに「来てくれてありがとう」と言われたんですよ。それで直接、対話することができたんです。そんなにスピリチュアルな話はしてなくて、「これからの地球はどうなるか」とか量子論的な見方とか、興味深いテーマでお話ししているので、あまりバシャール自体の信憑性について突き詰めないで読まれたほうが面白いと思います。僕は、バシャールは本物だと思いますけど。
—— 本日は、愛読書について興味深いお話しがきけました。どうもありがとうございます。
「峠」(上・中・下巻)司馬遼太郎(新潮文庫)
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹(新潮社)
「バシャール スドウゲンキ」須藤元気、ダリル アンカ(ヴォイス)
「レボリューション」須藤元気(講談社)
「風の谷のあの人と結婚する方法」須藤元気(ベースボール・マガジン社)
「神はテーブルクロス」須藤元気 (幻冬舎)