ホーム > LOVE書店! > STARの1冊 > 第21回大河内奈々子さん
大河内奈々子 (おおこうちななこ/女優)
1977年東京都生まれ。「セブンティーン」(集英社)のモデルをはじめ、TVドラマ、映画、舞台、CMで活躍。TBSドラマ「歌姫」レギュラー(小日向泉役)、TBSドラマ「特急田中3号」(加藤晴美役)ではレギュラー。「N響アワー」など司会もこなしている。
—— 面白い本、オススメの本をおしえてください。
最近面白い本がない、読み応えのある本がないものかと思っていて。
ある出版社の方に教えていただいたのが、この池井戸潤さんの『空飛ぶタイヤ』です。
最初にプロローグがあるんですが、これを読んだだけで泣けてきました。
—— どんな物語ですか?
走行中のトラックのタイヤがはずれ、歩いていた母子を襲って、母は即死していまうんです。フィクションなんですが、実際の事件を元にした作品です。タイヤが飛んだ原因は「整備不良」なのか、それともメーカーの責任か……。リコール隠しを題材にした作品。
東電OL事件をモチーフにした桐野夏生『グロテスク』と同じような、きわめて真実に近いフィクションです。
「大人が間違いを正さなければいけない」のにそれを隠している企業のトップのずるさ。綿密に取材してあるのか、リアルなストーリーです。
週刊誌の記者が追い、内部告発もあったりするのですが、最後まであきらめずに不正をあばくのが赤松という人です。この人は、事故を起こしたトラックを所有していた小さな運送会社の社長です。「真実を明らかにして、間違いは正されなければならない」と赤松は孤軍奮闘するんです。その情熱的な行動力がすごく魅力的です。
—— 社会派ヒーローという感じですね。
でも、最初は事故を起こしたのは、部下の整備不良が原因ではないかと思いこんでいたんです。その部下というのが金髪でヤンキー系の派手な格好をしている、見た目はちょっと悪そうな若者。逆上した赤松は、彼にまったくの濡れ衣をきせてしまい会社を首にしてしまうんです。これはあとで、気がついて部下のところに謝罪しに行くことになります。社長でも間違ったことが分かれば、素直に部下に謝る。これはなかなかできないことです。
実は、金髪の若者は外見に関係なく自分を採用してくれた社長に感謝し、人並み以上に仕事に真剣に取り組んでいたことがわかってくるのです。赤松が、深く反省する場面がありますが、私はこういうことができる赤松という人は素敵だと思いました。
版元は、実業之日本社ですがビジネス書ではなく、歴とした社会派小説。しかし内容は、カタくなくてエンターテイメントの要素もありますから、女性にも気軽に読めるでしょう。悪者、正しい者がはっきりと分かれていて分かりやすいと思います。
—— 結構ボリュームがありますね。
リコール隠しをめぐる作品ですが、メーカーが事故原因を隠していることを暴こうとするところはミステリー的な面白さもあります。また、家族との関係や赤松の人間的な成長もていねいに描かれてヒューマンドラマといってもいい側面も持っています。最近めずらしい2段組でこの厚さだからこそ、描き出せたのだとおもいます。
—— 印象に残っているシーンはどんなところでしょうか?
企業に不正があったことを、社員の妻が内部告発する場面があるんです。その奥さんが言った言葉があるんです。
「会社の常識は、社会の非常識」
このセリフで不正が生まれる原因が納得できました。
—— 読後感はどうでしたか?
ラストは、赤松社長はじめ、内部告発した奥さんや、部下たちはそれぞれの道を歩んでいく。という感じなんですが、「くやしい」という思いがわいてきましたね。なぜ、もっと早くリコール隠しが見つからなかったのか……。
ボリュームのある本でしたが、久しぶりに読み応えのある本を読み終わってしまったという「寂しさ」を感じました。
この本は、先週教えてもらって買おうとしたんですが、残念ながら本屋さんになくて取り寄せてもらったんです。初版が2006年の本なので新刊とはいえませんが、こういう面白い本は時間がたっても本屋さんの店頭に平積みしておいてほしいですね。
—— その他、最近のおすすめ本がありましたら教えてください。
山田宗樹さんの「嫌われ松子の一生」が好きで、読んだ時は興奮していろんな方にすすめました。それにしても松子はなんでこんなにダメなんでしょう。でも間違った道を選んでも不思議と応援したくなるんですよ。
何でもできてしまう完璧な人より、何をやってもダメ。だけどどんな時も一生懸命にがんばる松子は、すごく魅力的にみえるんです。一度、会いたいなと思う人ですね。
この松子の男版らしいと聞いて「ジバグ」も読んでみました。これは人生を転げ落ちていく男の話なんですけど。私は、松子の方が面白かったですね。
ちょうど今読んでいるのが東野圭吾さんの「流星の絆」。3分の1ぐらい読んだんですが、すでにかなり面白いです。さすがに東野さんの作品はいつも通り、楽しませてくれます。安心して読めますね。「レイクサイド」もよかったです。最後のページが衝撃的です!
—— これまで読んだ本で印象に残っているものをあげてください。
小さい時に読んだ本で、一番思い出に残ってるのが「赤毛のアン」何度も何度も読み返していたら、いつの間にかアンより年上になってしまってました。「モモ」や「アルケミスト」も大好きでしたが、この本ほど読み返したいと思う本はないですね。
次に読もうと狙っているのは、海外文学の新訳ものです。本屋の棚の前でうろうろとどれから読もうか迷っているところです。
—— 読書する時のお気に入りの場所は?
本を読むのは、家の中ですね。外は音とか人が気になるので自分の空間で読みたいんです。カフェもいいですけど、読書の時間を大切にしたいので。
本屋さんは、家の近所の本屋さんです。あと品川駅の本屋さんで小さいけど、好みの本を置いてある店があって、選びやすいのでよく利用しています。
—— そこがメインの本屋さんですか?
近所以外にも、新宿、渋谷、池袋……ここに行ったらこの本屋ときまったところがありますね。新刊だけでなく、すこし前の本も置いてあるお店がいいですね。本屋で発見する楽しみがありますから。
それにしても本の帯のコピーはすごいですね。ついつい読みたくなる事が書いてあるじゃないですか、うまいですね。実際、私も依頼されたことがあるんですが、書くのはむずかしいですね。
—— 作家さんでは好きな方というと
宮部みゆきさん、伊坂幸太郎さん、そして垣根涼介さんも大好きで、「ワイルド・ソウル」「ヒートアイランド」「君たちの明日はない」「借金とりの王子」とか。とくに「ワイルド・ソウル」は、実話なのかどうか気になってるんです。あの描写はどうしたら可能なのか、どうしてあんな事まで知っているのか、全て気になっています。
—— 最近の活動の状況をお教えください。
最近のドラマだと2007年4月から6月に放送されたTBS「特急田中3号」。おつぼねOL役でしたが、これは意外と楽しい役でしたね。昨年末にはTBS「歌姫」で相武沙季ちゃんの姉の役でした。妊婦役だったので、あまり動かない役なので楽でした(笑)高田純次さんがお父さん役で本当のお茶の間にいる気分でした。
「空飛ぶタイヤ」池井戸潤(実業之日本社)
「グロテスク」桐野夏生(文春文庫)
「嫌われ松子の一生」山田宗樹(幻冬舎文庫)
「流星の絆」東野圭吾(講談社)
「赤毛のアン」モンゴメリ(新潮文庫)
「ワイルド・ソウル」垣根涼介(幻冬舎文庫)
「ヒートアイランド」垣根涼介(文春文庫)