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『発掘部門』投票結果 2021年本屋大賞

洋の東西、ジャンル、さらに刊行の新旧を問わず、書店員が「売りたい」と思った本、常日頃から思っている本を推薦。バラエティ豊かな本が集まりました。

【発掘部門とは】
ジャンルを問わず、2019年11月30日以前に刊行された作品のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと思う本をエントリー書店員が一人1冊選びました。さらにその中から、これは!と共感した1冊を実行委員会が選出し「超発掘本!」として発表しました。

2021年発掘部門「超発掘本!」

『ない仕事の作り方』表紙

『ない仕事の作り方』

みうらじゅん(著)文春文庫

●推薦者
脊戸真由美/丸善博多店(福岡県)
●推薦コメント

ナイ、ナイ、ナイ、恋じゃない♪ナイ、ナイ、ナイ、仕事がない!
ちょうど一年前のこと。博多駅ビルに入っているうちの書店は、緊急事態宣言を受けて休業することが決まりました。「明日からよろしく」職場から電話がかかってきて、あっさりと何もない1ヶ月半がスタート。最初は「あっ、明日食べようと思ってロッカーに入れといたお菓子が腐る…」くらいの感想しかありませんでした。とはいえ、自宅謹慎では発散しきれないありあまる体力を消耗してやり過ごすべく、アテもない散歩という名の徘徊を、密を避けながら続けました。すると、とめどない不安にかられ、眠れなくなるハメに。立地により開いてる書店は通常営業、しかもかなり客数も増えてるようだ、ということに気づいたのです。一方、こちらは週に一度出勤して、お客さんのいない店で誰も買えない新刊を出す。一冊も売れてないのに次の新刊が届く。涙がでてきました。「まずい、まずいやろ、まずくない?ウチの店大丈夫?どうすればいい?不安。ふあんタスティック!」
頭に浮かんだのは「仕事がナイなら、作ればいいジャナイ」。いまこそこの本を読み直すとき。ゆるキャラ、マイブームなど数々の流行語を生み出してきたMJ(みうらじゅん)流のかなりどうかしている仕事の作り方です。

いままで誰も気に留めてなかったモノ・コトに注目し、これと決めたら、それが好きでたまらないのである、と自分を洗脳し、周囲が無視できないほどの異様な熱で、この人どうかしてる、と思わせるプレゼンをすることで、数々の仕事を作ってきたMJ。

巻末の糸井重里さんとのスペシャル対談で、糸井さんは、「みうらが拾わなくなったら、ただの風景に戻る。拾うからなにかになるんだ」と言います。わたしの周囲にも、きっと見落としてるものがあるのでしょう。下を向いて歩こうと思いました。

ププッと笑っているうちに、なんとかなるんじゃないかという気になってくる。のけぞるほど熱くどうかしているこの本を読めば、ショボい日だったとしても「でも、そこがいいんじゃない!」と面白がれる。明日もきっとどうにかなる。そう思えてくるのです。


●著者
みうらじゅん
●お礼のことば

 今回は発掘していただき、ありがとうございます。しかも“超発掘”だということで、大変、御苦労をおかけしました。
 それにあやかって、今後、みうらじゅん改め、ミイラジュンにしてもいいなと思っています。
 1980年に一応、漫画家としてデビューしましたが、以降、世間的には何をしているのかよくわからない変人でやってきました。
 たしか『「ない仕事」の作り方』は、そんな僕がデビュー35周年を迎えて、もう一度、自分が何をしてきたのかを再確認するために企画した本だったと思います。
 はじめから“ない仕事”を目指した覚えはありませんし、出来れば“ある仕事”に就きたかった。しかし僕には、何かに夢中になると、つい“ない”ものを“ある”ように言ってしまう妄想癖がありました。それは、クラスメイトに「仏像ブームが来る!」と言い張って止まなかった小学生の頃から一向に治りません。
 気が付くと、“ある仕事”から“ない仕事”にシフトしていました。問題はそれをどう“ある仕事”に見せるかです。そのためには、“僕が”という主語を“それが”に変え、より多くの理解を得られることが肝心です。
“ない仕事”とは、そうやって生まれてきたものでした。
 賞に選んでくださった方々に改めて感謝の意を述べさせていただき、ミイラジュンの話は終わりといたします。ありがとうございました。

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2021年発掘部門「発掘本!」全リスト
タイトル 著者名 出版社名
無ない仕事の作り方 みうらじゅん 文春文庫
煌夜祭 多崎礼 中公文庫
うつくしが丘の不幸の家 町田そのこ 東京創元社
箱の中 木原音瀬 講談社文庫
蜜の残り 加藤千恵 角川文庫
塔の断章 乾くるみ 講談社文庫
退出ゲーム 初野晴 角川文庫
東京バンドワゴン 小路幸也 集英社文庫
キッド・ピストルズの冒瀆 パンク=マザーグースの事件簿 山口雅也 光文社文庫
茨木のり子集 言の葉1 茨木のり子 ちくま文庫
死のクレバス アンデス氷壁の遭難 ジョー・シンプソン 岩波現代文庫
『罪と罰』を読まない 岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美 文春文庫
プラネタリウムの外側 早瀬耕 ハヤカワ文庫JA
トラちゃん 群ようこ 集英社文庫
カインは言わなかった 芦沢央 文藝春秋
ためらいもイエス 山崎マキコ 文春文庫
スリープ 乾くるみ ハルキ文庫
風の文庫談義 百目鬼恭三郎 文藝春秋
薪を焚く ラーシュ・ミッティング 晶文社
あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します 菅野彰・立花実枝子 ウィングス文庫
聴き屋の芸術学部祭 市井豊 創元推理文庫
一朝の夢 梶よう子 文春文庫
流しのしたの骨 江國香織 新潮文庫
ミリオンダラー・ベイビー F・X・トゥール ハヤカワ文庫NV
愛しいひとにさよならを言う 石井睦美 中公文庫
邪馬台国はどこですか? 鯨統一郎 創元推理文庫
鷺と雪 北村薫 文春文庫
月の落とし子 穂波了 早川書房
14歳 いらない子 ヨヅキ 私の生き方文庫
風の影 カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫
雷桜 宇江佐真理 角川文庫
やさしい魔女の救いかた 井上悠宇 LINE文庫
千葉の殺人 アッシュ・スミス 小学館
同性愛は「病気」なの? 牧村朝子 星海社新書
その青の、その先の、 椰月美智子 幻冬舎文庫
雨鱒の川 川上健一 集英社文庫
ぼくを探しに シェル・シルヴァスタイン 講談社
アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 創元推理文庫
プラネタリウムのふたご いしいしんじ 講談社文庫
撃つ薔薇 大沢在昌 光文社文庫
詩と死をむすぶもの 谷川俊太郎、徳永進 朝日文庫
本屋さんで待ちあわせ 三浦しをん だいわ文庫
筺底のエルピス オキシタケヒコ ガガガ文庫
パプリカ 筒井康隆 新潮文庫
紙の本は、滅びない 福嶋聡 ポプラ新書
迷路の外には何がある? スペンサー・ジョンソン 扶桑社
スタートラインに続く日々 今村彩子 桜山社
からくりからくさ 梨木香歩 新潮文庫
短歌パラダイス 歌合二十四番勝負 小林恭二 岩波新書
神様からひと言 荻原浩 光文社文庫
小児がん外科医 松永正訓 中公文庫
喜嶋先生の静かな世界 森博嗣 講談社文庫
二十年目の桜疎水 大石直紀 光文社文庫
はなとゆめ 冲方丁 角川文庫
今日のハチミツ、あしたの私 寺地はるな ハルキ文庫
ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい クリスティン・バーネット 角川文庫
ブッデンブローク家の人びと トーマス・マン 岩波文庫
くらげが眠るまで 木皿泉 河出文庫
拝み屋郷内 花嫁の家 郷内心瞳 MF文庫
狂乱廿四孝/双蝶闇草子 北森鴻 創元推理文庫
本にだって雄と雌があります 小田雅久仁 新潮文庫
トリツカレ男 いしいしんじ 新潮文庫
家守綺譚 梨木香歩 新潮文庫
はじめての短歌 穂村弘 河出文庫
支那そば館の謎 裏京都ミステリー 北森鴻 光文社文庫
書のひみつ 古賀弘幸著、佐々木一澄イラスト 朝日出版社
はてしない物語 ミヒャエル・エンデ 岩波少年文庫
凍りのくじら 辻村深月 講談社文庫
ウルトラクイズ伝説 福留功男 日本テレビ放送網
西の魔女が死んだ 梨木香歩 新潮文庫
know 野﨑まど ハヤカワ文庫JA
マカン・マラン 古内一絵 中央公論新社
イスラム飲酒紀行 高野秀行 講談社文庫
おれたちの頂 復刻版 塀内夏子 ヤマケイ文庫
アリス殺し 小林泰三 創元推理文庫
百人一首という感情 最果タヒ リトルモア
鯨の王 藤崎慎吾 文春文庫
かけら 青山七恵 新潮文庫
メイデーア転生物語1 この世界で一番悪い魔女 友麻碧 富士見L文庫
ブンとフン 井上ひさし 新潮文庫
院内カフェ 中島たい子 朝日文庫
妻の終活 坂井希久子 祥伝社
巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 石井好子 河出文庫
和菓子のアン 坂木司 光文社文庫
ザ・スタンド スティーヴン・キング 文春文庫
どろぼうのどろぼん 斉藤倫 福音館書店
捜し物屋まやま 木原音瀬 集英社文庫
猫たちの聖夜 アキフ・ピリンチ ハヤカワ文庫NV
ペンギンは空を見上げる 八重野統摩 東京創元社